赤亀 田渕晋 BL小説


とろりと煮つめた漆黒の蜜(みつ)のような、つややかで濃密な瞳が視界いっぱいに広がる。唾液が顎をつたって、掛け布団の上に落ちた。手を伸ばして冷たい扉にぴったりと寄せる。「どこが?」。涙がとめどなく溢れて、司野のシャツを濡らしていく。京の歯列を割って連の舌がはいってきて、パニックに拍車をかける。

なにかが脊髄《せきずい》を駆け上った。いつもなら、かなりの効果をあげるこの台詞に、だが弥勒はフッと小さく微笑むと、伊織の唇ぎりぎりに自分のそれを寄せて呟いた。むくむくと身体が膨れ上がり、服が裂けて顔が醜く変化していく。あいつに、弱みなんか見せたくなかった。

体が勝手に跳ねてしまう。

頂点に達した怒りはブッチリ俺の堪忍袋の緒を切って拳こぶしを振るわせた。「ああ。壁画の上に塗られた漆喰を、こんな感じでそうっと拭きながら、少しずつ剥がしていくんだ。それとほとんど同じ作業だよ。ちょっとずつ、ベタベタにこびりついた血糊を拭き取っていくんだからな」。実際、口と声は笑っていても、ジェレミーの目は真剣そのものだった。話してみたいと思いながらも、島の人々から疎まれている自分が話しかければ、翔にも迷惑がかかると思い、薪にはそれが出なかった。「っ…っ、けほっ」。言いながら嶋田が腰を押しつけてきた。言いながら、大日向は八紘のシャツのボタンを外そうと焦っている。

「これはもう羽織の見せる夢じゃないよね……?」。顔を上げて、うっとりと恭一郎は断言した。

無理に振りほどこうとはせず、俺を見つめる。


ボーイズラブ小説作品紹介


借金返済のためボーイズキャバクラでバイト中の大学生・竜弥のもとに突然、現れた義兄、英彦。幼き日、竜弥に憧れと恐れと……生まれて初めて欲情を抱かせた怜悧な義兄との8年ぶりの再会……だが、弁護士の英彦は、そんな竜弥の想いも知らず、常連客である人妻との不倫を詰問する。身の潔白を証明すべく、竜弥は英彦の前に己の欲望のすべてを曝け出すことに……。究極のブラコン・ファイアLOVE。

タイトル:義兄(あに)は絶対零度の支配者
著 者 名:鹿能リコ
レーベル:フィリア文庫
発 行 元:イースト・プレス

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